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150 Macとデザイン・DTPのあゆみ

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デザインやクリエイティブ・ワークの現場にMacユーザーが多いというのは、みさなんご存知ですよね。
今でこそアプリケーションソフトはクラウド化して、「Macか、Windowsか」というプラットフォーム選択の問題がさほど取り沙汰されなくなりましたが、ちょっと前までは非常に悩ましい大問題でした。

さらにそれ以前はといえば、「デザインならMac一択」というのが業界の常識でした。なぜ、“デザインといえばMac”なのか? それにはMacというコンピュータの誕生そのものと深い関わりがあったのです。ちょっと歴史を紐解いてみましょう。

1984年にリリースされた初代Macintosh

今を遡ること40数年前。
ジョブズとウォズニアックの二人の“スティーブ”が、米カリフォルニアの自宅ガレージで誕生させたマイクロコンピュータ「Apple I」をきっかけに、アップルコンピュータ(後のアップル)を創業したのが1976年のことでした。後継機「Apple II」の大ヒットを受け、1980年には株式公開で莫大な資金を調達して鳴り物入りでパーソナルコンピュータ業界へ参入。「Apple III」や「Lisa」を開発するも販売不振に終わるなどの紆余曲折を経たのち、1984年1月に初代「Macintosh(マッキントッシュ)」を世に送り出しました。とある林檎の品種名から名付けられたこの一体型のコンピュータこそが、現在に連綿とつづくMacの原点です。

一般向けのパーソナルコンピュータとしては、世界で初めてマウス操作によるGUI(Graphical User Interface:グラフィカルユーザインタフェース)を搭載したMacintoshは、コンピュータの概念を一変させるエポックメイキングな製品でした。というのも、当時のコンピュータはコマンドをキーボード入力することで操作するCUI(Character User Interface)がほとんどでしたから、パーソナル、すなわち「個人向け」のコンピュータとはいえ、とても専門的な高度なスキルを要求される敷居の高い代物でした。

それが「マウスを使って、アイコンやウィンドウを操る」という誰でも直感的に操作可能な仕組みを実現したのがMacintoshだったのです。MS-DOSがWindowsに置き換わってからはあたりまえとなったGUIですが、そのはじまりはMacだったのです。

そして翌1985年に、パソコン用レーザープリンタ「Laser Writer」とページレイアウトソフト「Aldus PageMaker」が発売され、DTP(Desktop publishing:デスクトップパブリッシング)の環境が整ったことで、MacintoshはDTPマシンとしてのあゆみをスタートさせます。

DTPは「卓上出版」と訳されることもありますが、ざっくりいえば印刷物をパソコン上で制作する仕組みのことで、PageMakerというソフトとともに生まれた言葉です。パソコン画面を机の上に見立て、デザインやレイアウトの作業をその中で完結させることのできるという、当時からすれば夢のようなシステムで、「WYSIWYG(What You See Is What You Get:ウィジウィグ)」という概念とともに、さかんにPRされました。パソコンの画面で見たとおりに紙に印刷されて出てくるということが、画期的な技術革新として騒がれる……、その頃はそういう時代だったのです。

そのWYSIWYG実現に貢献したのが、アドビシステムズ社が開発したページ記述言語「PostScript(ポストスクリプト)」です。アプリケーションソフトが作成したデータをPostScript形式で記述し、出力装置の側で計算・実行することで高速かつ高品位なプリントが可能になりました。この技術により、やがて商業印刷においてもDTP化が実現されることとなります。

PostScriptの開発元であるアドビシステムズの社内で、フォント制作などPostScript言語の編集ツールとして利用されていたソフトウェアが元となり、1986年12月に一般向け製品として開発されたのがAdobe Illustratorです。翌1987年1月にバージョン1.0が出荷。もちろんMacintoshの専用版です。

その後は、1988年にIllustrator 88(ver 1.6)、1990年にIllustrator 3.0が登場。1993年に登場したllustrator 5.0から、現行のようにプレビューを見ながら作業できるようになり、使い勝手が向上しました。

そしてもうひとつの定番ソフト「Adobe Photoshop」といえば、ミシガン大学の学生トーマス・ノール氏が開発したMacintosh Plus 向けの画像編集ソフトを、アドビ社がライセンス契約を結んで「Adobe Photoshop 1.0」として世に送り出したのが1990年2月。翌年にはバージョン2.0、1993年にはPhotoshop 2.5がリリースされています。

この頃には、前述のPageMakerに加え、ページレイアウトソフトの「QuarkXPress」も登場し、日本語フォントの環境も徐々に整いはじめ、出版や広告業界でDTP化の流れが急速に進みます。雑誌や書籍を制作するエディトリアル・デザイナー、ポスター、パンフレット、パッケージなどさまざまな印刷物をつくるクリエイターの間で、新しい道具、そして強力な武器としてMacとDTPソフトが定着していきました。

日本ではWindows 95の大ブームをきっかけに、一般ユーザーへのパソコン普及が進んでいきます。この頃までに、Mac版を追うかたちでWindows版のllustratorもバージョン 2.0および4.0が、Photoshopもバージョン2.5および3.0が発売になっていましたが、10万円以上する高額さのため、さほど定着しませんでした。
こうした流れの中で、IllustratorやPhotoshopは、先行するMac環境でデザインやDTPで稼ぐ人たちのプロの道具としての地位が築かれていったのです。

この頃からのユーザーであるデザイナーやクリエイターなどには、とりわけMacへの愛着やこだわりの強い人たちが多く、「30年来のMacユーザー、Windowsに浮気なんて一度もしてません」という方も珍しくありません。クリエイティブワークの現場で切磋琢磨しつづける人たちにとってMacはただの道具にはとどまらず、新しい時代を共に切り拓いてきた同士とも言える存在となっているようです。そしてIllustratorやPhotoshopも、同じような思いで使いつづけているクリエイターも多いことでしょう。

というわけで、「デザインならMac」という神話(?)が今もいきつづけている背景を説明してみましたが、新しいユーザーのみなさん、ご理解いただけたでしょうか? “クリエイティブ”というキーワードがなによりふさわしいのがMacなんです。逆に言えば、せっかくMacを使っているのにクリエイティブじゃないなんて、大いなる宝の持ち腐れとも言えるわけで……。

サブスクリプション方式の導入によって、今やllustratorやPhotoshopもずいぶんと始めやすくなりました。クリエイティブ業界でもトップを走り続けるこれらのツールは、あなたのMacの、そして、あなた自身のクリエイティビティ(創造力)のポテンシャルを大きく引き出してくれることでしょう。
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アーストでは、llustrator、Photoshop、現在の主流のDTPソフト「InDesign」を学ぶマンツーマン・スタイルのレッスンをおこなっています。一人でも多くのMacユーザーのみなさんに、「デザインする楽しさ」や「自分でつくりあげる喜び」を味わっていただきたい、そんな思いでレッスンに臨んでいます。
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